アーティスト紹介

WSC #048 OZ

[MAD ROAR]

個性的でありつつも一般性を兼ね備えはじめた
「オレを見ろ!」的造形の斬り込み隊長

 次期WSCアーティストを選出するスタンスにてワンフェス会場を歩いていると、「オレを見ろ!」というオーラを放つ造形物は否応なしに目に飛び込んでくる。
  ただし、未だ版権キャラクターの立体化が大半を占め、「造形の元となったデザイン画にどれだけ似ているか」という点が過剰に重んじられる現状のガレージキットシーンにおいて、「オレを見ろ!」然としたオーラを放つ個性的な造形は両刃の剣でもある。たとえばWSC#006 臼井政一郎のように、他に類を見ないほど個性的でありつつも、デッサン力や空間構成能力等が強烈に秀でた作品を提示すればまた話は別であるが、安易なアレンジや過剰なデフォルメなどは反感の対象となりかねない。
  そうした意味において、「オレを見ろ!」系造形の典型例とも言えるOZは、見ようによってはアドバンテージと同等以上にディスアドバンテージも併せ持ったタイプの造形作家である。実際のところ、'07年[夏]のディーラー初参加時点ですでに複数人のWSC選出スタッフの目に留まり、その才能を強く推す者がいた反面、「あのだだっ広い会場内で目立つためにはとにかく個性的であるしかない」というあまりにも前面に出すぎていた独善性も指摘され、「もうひと皮剥けるまで静観してみよう」という結論が導き出されていた人物なのだ。
  であれば、今回のWSC選出=OZがひと皮剥けたという話になるのが自然だが、実際には「半皮剥けた」時点での選出と言えるかもしれない。
  というのも―じつの話、OZ造形の本質的な部分はデビュー当時からほとんど何も変わっていないのだ。
  が、作品数をこなし、「他者からの視線」をある程度意識できるようになり独善性がよい塩梅で目減りした結果、本質的には何も変わっていないOZ造形が以前以上に輝きを増しはじめたのである。
  ならば、他者からの視線を意識しすぎてバランスよくまとまってしまう前に、ある程度のバランスの悪さが逆に魅力的に映っているいまの段階でOZの才能を世に提示してみたい、という結論に至ったというわけだ。
  プレーンな作品を好む人からすれば現段階でもその独善性が鼻につくかもしれないが、OZ造形ならではのスピード感溢れるポージング(医療系専門学校での経験を通じて得た、筋肉のリアルな流れがデフォルメされ盛り込まれていたりもする)やダイナミックで荒々しい躍動感に、できれば一度触れてみていただきたく思う。
  食わず嫌いで敬遠しているような人も、口にしてみれば案外、「……おっ!?」と思えるはずだから。

text by Masahiko ASANO

おず198X年2月23日生まれ。小学生時代はアニメ好きで、メカやキャラクターのイラストを描くことを趣味とする。高校卒業後医療系の専門学校に進むも、2年生のときにビジュアル系ロックバンド(Vo.担当)を結成し、バンドに熱中しすぎて中退。音楽で食べていくことを目標に置きつつ、生活費を稼ぐためにアルバイトを探しはじめた際、たまたまバンダイのマスターグレードシリーズ(ガンプラ)の存在を知って興味を抱き、その流れから模型店にてアルバイトをはじめるに至る。そして、アルバイトと並行してガンプラやガレージキットの製作に着手しはじめたところ、模型製作の腕がまたたくまに上達、趣味的にはじめたモデルフィニッシャーとしての収入がアルバイト代金を上まわるほどとなったが、彼女が病気で倒れた等のさまざまな理由からモデルフィニッシャーとバンドの道を断念することに。その後「会社員として働きつつワンフェスに参加する」というスタンスへ転じ、'07年[夏]から“STAND ALONE”名義にてディーラー参加を開始。'10年[冬]からは“MAD ROAR”名義にての活動となる。

WSC#048プレゼンテーション作品解説

© 壱


小狐

from イラストレーター“壱”のデザインによる、壱界の住人
ノンスケール(全高190mm)レジンキャストキット+小狐イラストポストカード(画/壱)


商品販売価格
ワンフェス会場特別価格/6,800円(税込)
ワンフェス以降の一般小売価格/8,800円(税込)


「とにかく個性的であろう」とする造形は、ともすればその独善性が鼻につくもの。ひたすら個性的な作風で突き進むOZもやはりそこが弱点であったわけですが、「他者(キットの買い手側)からの視線」をある程度意識できようになったいま、彼の造形は大きな転換期を迎えています。'09年[夏]のワンフェスに未完成状態にて展示され、『ワンダーショウケース』選出の決め手となったプレゼンテーション作品の『小狐』(イラストレーター“壱”のデザインによる、壱界の住人)は、これまでのOZ作品に見られた独善性をよい塩梅で目減りさせつつ、しかしその強烈な個性がこれまで以上に際立った逸品。アンバランスなほどの前傾姿勢を支える強靱な体のバネ(とくに脚のバネ感に注目)、勢いよく跳ね上がったボリューム満点の髪の毛など、OZならではの造形表現がてんこ盛り状態で練り込まれた意欲作です。プレーンで無味無臭的な造形を好む人にはおすすめし難いところもありますが、この躍動感とスピード感に溢れる造形をぜひとも体感してみてください。

OZからのコメント

 文章が苦手で、文章で何かができる人種ではないので、まずは私の造形を見てください。どうですか? 文章どころか、造形でも何ができるわけでもないようですよ……orz

 はじめまして、“OZ”と申します。模型に目覚めたのは、夏休みの工作課題でした。小学生とは思えない造形物を父がほとんど作り上げ、私に残された仕事はサンドペーパーをかけるだけ。で、やっぱり賞とか取っちゃって、幼いながらに罪悪感が芽生えた小学生のころ……とはほど遠い20歳くらいのころです。それから幾星霜……。
  頭のなかのイメージの解像度がそれほど鮮明でなく、出力されたものも大して鮮明ではありません……資料を見ないで、高解像度に作り上げる父が本当にすげーなといまさらながらに思います。職人か~……悔しいな~、まったく修行が足りてません。なので、まだまだ修行中です。
  目標は巧くなること。巧くなったと思えるのはきっと主観では計れないので、今後の結果が、それを否応なしに叩きつけてくれるでしょう。結果が出なければ、この出力機はいらないことになりそうです……機種は古いですがアップグレードには対応しているはずなんです!! 見捨てないでください。廃棄にはお金もかかるじゃないですか? エコですよ。エコ。だからお願いします。使ってください。
  皆さま、ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします。

 この場を借りて、壱さんに感謝を!! これからも末永くよろしくお願いいたします。それと、小田君のおかげでテッカテカに仕上がりました。ありがとうございます。
  さまざまな方々に支えられ、私は生きてます。地球に感謝を。だけど、ラッカー系塗料での塗装は、地球に悪くてもやめられません……私もマスクつけてないんでそれで許してください。