『ワンダーショウケース(以下WSC)』はワンダーフェスティバル(以下ワンフェス)を母体とする新たな組織(レーベル)であり、ワンフェスから生まれた才能に幅広い可能性を提供するためのサポート機関、新進ガレージキット作家の育成と繁栄に目的を置いたアーティストプロデュースシステムです。あえてたとえるならば“ガレージキット版『スター誕生』”とでも称すべきものであり、誤解なきようあらかじめ明言しておきたいのは、これは決して「若手原型師の青田買い」ではないという点です。

ワンフェスを舞台に活躍しているガレージキット作家のなかからWSC参加アーティストを選出、各アーティストごとに6か月間のプロデュースを行ないます。その期間中は参加アーティストの作品をWSCプレゼンテーション作品として販売すると同時に、参加アーティストの才能が広く理解されるよう、積極的な支援活動を試みていくつもりです。
  プレゼンテーション作品の販売はワンフェス会場(WSC特設ブース)をメインとしますが、ワンフェス終了後も(株)海洋堂直営ショップでの取り扱いや通信販売を通じ、ワンフェスへ参加できなかった(来場しないような)人々への流通も確保します。

WSCとの契約期間中も参加アーティストは基本的にはフリーの立場にあり、フィギュアメーカーや出版社をはじめとする無数のクライアントとの業務上での接触、および実作業は、各アーティストの意向に任されます。プロデュース期間中、アーティストへの連絡窓口はWSCが担いますが、恒久的にマネージメントを拘束するわけではありません。あくまでも期間限定問い合わせ先として、アーティストへのサポートを務めます。このような交渉事においては、ワンフェスを主催する(株)海洋堂も単なる1クライアントとして他クライアントと同一線上の立場に置かれるため、(株)海洋堂がそのアーティストに対し優先的に仕事を依頼できるような特権を持つことはありません。この点につきましては本レーベルにおける意義の根幹に関わる部分ですので、厳正なルールを適用していきます。

また、WSCでのプロデュース期間終了後は、そこで販売したプレゼンテーション作品の権利も各アーティストへ完全に返還します。ですから、「WSCプレゼンテーション作品として販売されていたそのもの自体をパーマネント商品のガレージキットとして引き続き販売したい」「WSCプレゼンテーション作品として販売されていた作品をPVC製の塗装済み完成品にしたい」といった要望も、アーティストとの直接のやりとりの元で可能となります。

WSC参加アーティストは、ワンフェスを中心に活動し、かつ、本企画の趣旨に賛同される新進ガレージキット作家すべてから広く求めます。こちらから声を掛ける場合もありますが、ガレージキット作家自身や、ワンフェスに関わるすべての人々(一般入場者や、プレス/業界関係者も含む)からの推薦や提案も常時歓迎いたします。
  つまり、ガレージキット作家の「自分は新たなステップを踏み出したい」という意思表示の場として、その他の人々の「この才能をこのまま放置しておくべきではない」といった“目利き”の場としても、WSCは機能するものと考えます。

以上のように、WSCの活動目的は「参加アーティストが自身の将来を見据えた際、複数の選択肢のなかからそれを選ぶことができるような環境の作成に協力していく」ことにあります。要は「参加アーティストに、それ相応の力がある事実を世に広く提示すること」がその主たる活動であり、その結果、将来的に彼らがどのような道を歩んでいくか(たとえば、原型師としてプロフェッショナルデビューするかどうか)は、各人の判断に委ねていくつもりです。これまでこの世界では聞き慣れなかった“レーベル”という枠組みを名乗る意義もそこにあり、商品販売で利潤を生むことを目的とする“メーカー”とは一線を画す存在として機能していきたいと考えています。
  さらに、実際に販売するプレゼンテーション作品(レジンキャスト製ガレージキット)についても、「物欲を満たす対象」としてだけでなく「そのガレージキット作家への信任投票」という側面も含んでおり、そういう意味では、一般顧客までが広く参加するムーヴメントであると言えるでしょう。

('99年8月8日発行のプレスリリースより転載、WSC公式Webサイトへの掲載にあたり'09年6月に一部を改稿)